中小企業のDXは何から始める?受注の返信遅れを減らす体制と進め方

DX · 経営者の実務ガイド
中小企業のDXは何から始める?受注の返信遅れを減らす体制と進め方
DXを始めたいのに、社員が忙しく、誰に何を頼めばよいか分からない経営者の疑問に答えます。
DXでは、顧客に届ける価値を高めるために、データとデジタル技術で仕事や会社の仕組みを変えます。顧客への納期の返事が遅れる場面を例に、担当の分担、道具の選び方、小さく試す計画を整理できます。

この記事でできること
- 顧客の困りごとと、最初に変える受注の仕事を結び付けられる
- 経営者・営業・出荷・管理担当へ具体的な準備を頼める
- 道具を比べ、小さな試行の結果から継続や見直しを判断できる
01 / 中小企業のDXの始め方
DXの目的を、「納期の返事が遅い」からどう決める?
顧客に届けたい状態を先に置き、最初に変える仕事を絞ります。

この会社の顧客は、商品をいつ受け取れるかを早く確かめたいと考えています。営業はメールで受注を受け、出荷担当へ在庫と準備状況を確認します。確認した内容が担当者のメールに残り、別の営業社員からは見えません。担当者が不在になると、顧客への返事が止まります。まず経営者は「担当者が替わっても、確認済みの納期を説明できる会社にしたい」と言葉にします。
そのうえで、最初の対象を「営業と出荷担当の間で、納期回答に必要な確認を共有する仕事」に絞ります。注文を受けてから納品までのすべてを一度に変える計画にはしません。この会社では、過去の問い合わせと担当者への聞き取りから、納期確認が顧客の待ちにつながっていることを確かめる想定です。自社では、実際の記録を読んで対象を決めてください。
DXは、データやデジタル技術を使って、顧客への価値や会社の仕事・組織を変えていく考え方です。Excelへ書き写す作業を減らすことは、その一歩になる場合があります。ただし、道具を買うだけで会社の変革が終わったとは言えません。改善した記録を営業の判断へ使い、担当交代でも説明できる働き方にするところまで、将来の方向を持ちます。
経済産業省の2025年の手引きは、経営者が将来の経営ビジョンを描き、現状との差を整理し、関係者を巻き込む考え方を示しています。IPAのDX推進指標も、経営層と業務・IT部門が現状と目指す状態を共有するための手掛かりです。自社の着手計画では、難しい宣言より「顧客へ何を説明できる会社にするか」を具体化してください。
経営者が最近の受注1件を確認し、顧客へ届けたい状態を1文で書く。
02 / 中小企業のDXの始め方
経営者、営業、出荷担当は、それぞれ何をする?
経営者が目的と判断を持ち、利用部門が確認する資料と操作を持ちます。

経営者が「DXは担当者に任せた」と言って離れると、部門をまたぐ優先順位や費用を決める人がいなくなります。経営者は、納期回答を変える目的、使える時間と支払いの上限、試行の対象、続けるかを判断する日を持ちます。担当者の意見を聞き、通常業務から準備時間を確保できるかも調整してください。
営業担当は、顧客が何を尋ね、どの情報があれば返事を作れるかを示します。出荷担当は、在庫、準備完了の予定、配送の条件について、どの情報を確定できるかを示します。どちらかの推測を正式な納期にしないことが大切です。営業と出荷担当は、受注N032を使い、確認済みと未確認を見分ける操作を一緒に確かめます。
管理担当は、使ってよい資料、閲覧や変更を許す人、記録の保存、問題が起きたときの連絡先を確認します。専任のIT社員がいない会社なら、既存の管理担当が窓口を持ち、外部支援の必要な範囲を経営者へ伝えます。1人がすべての仕事を引き受けるという意味ではありません。役割を兼ねる場合も、何を判断する役なのか分けて記録します。
各担当に代わりの人を決めると、担当者の休みで試行が止まるかも確認できます。この例では、経営者が毎週の確認時間を設け、営業・出荷・管理担当が未決の質問を持ち寄る計画にします。毎週が全社共通の正解という意味ではありません。自社の忙しい時期と判断期限に合わせ、集まれる頻度と窓口を決めてください。
小さい画面では、表を左右に動かして全項目を確認できます。
| 役割 | この会社で持つ仕事 | 準備する物 |
|---|---|---|
| 経営者 | 目的・対象・予算・継続の判断 | 着手計画、判断日 |
| 営業担当 | 問い合わせと回答に必要な情報を示す | 元メール、回答例、確認者 |
| 出荷担当 | 在庫・準備・配送の確定条件を示す | 在庫記録、準備予定、未確認事項 |
| 管理担当 | 利用者・保存・問題時の窓口を決める | 権限の一覧、保存方法、連絡先 |
経営者が4つの役割の担当者と代替担当を決め、準備時間を確保する。
03 / 中小企業のDXの始め方
納期確認には、Excelの見直しと新しい道具のどちらが必要?
必要な操作を同じ条件で試し、既存の道具で足りるかから確かめます。

この会社が必要としているのは、営業と出荷担当が、同じ受注の確認状況、確定納期、確認した人を読めることです。画面の見栄えや機能の数だけで道具を選びません。担当者が資料を探し、元の受注と比べ、未確認の条件を質問できるかを確かめます。営業担当が替わっても説明できることも条件に含めます。
既存のExcelを使うなら、部門別のコピーを増やす方法ではなく、現在の共有や更新の方法を確認します。受注番号、確定納期、確認者、未確認事項などを同じ場所に残し、変更が誰に見えるかを試します。同時に変更したときの扱い、履歴、閲覧の範囲を満たせない場合は、その不足を残してください。Excelなら必ず実現できると決めつけません。
既製のサービスを検討する場合、用意された受注や案件管理の機能で同じ確認ができるかを試します。入力する回数、利用者の権限、記録を外へ取り出す方法、利用者数に応じた費用も確認します。既製の機能に会社の仕事を合わせられるかと、会社の重要な条件を変えてよいかは別の判断です。必要な部分だけ外部の設定支援を頼む方法もあります。
個別開発は、既存の道具や既製機能では重要な条件を満たせない場合の候補です。経営者は、満たせない操作と理由を示して見積を頼みます。費用を比較するときは、設定・資料整理・教育・公開後の保守までの範囲をそろえます。まだ相手の提案がない段階で、既製が最安、開発が最良とは確定しません。
小さい画面では、表を左右に動かして全項目を確認できます。
| 方法 | 先に試すこと | 次へ進む条件 |
|---|---|---|
| 既存のExcelを整える | 同じ受注を共同で読み、変更と履歴を確かめる | 重要条件を満たし、管理担当が運用できる |
| 既製サービスを使う | 用意された機能でN032の確認を再現する | 費用・権限・取り出し方を確認できる |
| 個別開発を検討する | 既存や既製で満たせない操作を示す | 必要な範囲と公開後の担当を合意できる |
担当者が現在のExcelと候補の道具でN032を確認し、不足する操作を記録する。
04 / 中小企業のDXの始め方
本番の受注を止めずに、最初の試行をどう進める?
別の記録で試し、入力から確認済みの回答までを利用部門が照合します。

試行は、本番の受注記録を直接書き換えるところから始めません。この会社では、営業と出荷担当が必要な資料を選び、社内で使用を許された範囲の情報を別の試行用記録に用意します。外部サービスへ渡す場合は、資料の利用条件と会社の情報管理のルールを管理担当が確認します。顧客名など試行に不要な情報は除いてください。
受注N032の試行用資料には、商品Aを10個、希望納期10月25日、在庫6個、不足4個の準備予定10月24日と記します。この入力だけでは10月25日の到着を確約できません。出荷担当が配送条件を確認し、営業は「配送条件は未確認」と記録します。確認済みの情報と確認が必要な情報を分けるところまでが、今回の試行で確かめる仕事です。
試行する資料は、いつもきれいな注文だけにしません。この例では通常6件、納期変更2件、配送条件が不明な1件、変更権限のない担当が操作する1件の計10件を用意します。10件は試行の準備例で、十分な件数や安全性を保証する数ではありません。自社で重要な例外と、通常の仕事のばらつきに合わせて増減します。
営業と出荷担当は、受注番号と品目・数量・希望納期を元の資料と比べ、確認済み納期の根拠へ戻れるかを確認します。間違った受注を開く、数量が変わる、未確認の納期が確定扱いになる場合は、その対象の試行を止めて原因を直します。顧客への正式な回答は従来の確認手順で担当者が行い、試行の出力だけで自動送信しません。
小さい画面では、表を左右に動かして全項目を確認できます。
| N032の試行用入力 | 確認する担当 | 記録する結果 |
|---|---|---|
| 商品Aを10個、希望納期10月25日 | 営業担当 | 受注番号・品目・数量・希望納期を元資料と照合 |
| 在庫6個、不足4個を10月24日準備予定 | 出荷担当 | 在庫と準備予定の根拠を残す |
| 配送条件の記録なし | 出荷担当 | 未確認と記録し、到着日は確約しない |
| 営業の代替担当が回答を確認 | 営業の代替担当 | 確認済みと未確認を読み分ける |
営業と出荷担当が通常・変更・不明・権限の試行用資料を選び、元資料と結果を照合する。
05 / 中小企業のDXの始め方
顧客への返事が早まったら、そのまま広げていい?
返事までの待ちだけでなく、回答の正しさと全員の作業時間を確認します。

顧客が待つ時間と、社員が作業した時間は同じではありません。営業が問い合わせを受けてから回答するまで120分かかっていても、その120分すべてを社員が作業しているとは限りません。待ち時間の短縮は顧客への価値になり得ますが、短くなった分をそのまま社員の時短や現金の利益にはしません。
この架空の比較では、同じ内容の問い合わせ1件について、従来は回答まで120分、営業と出荷担当の作業合計は25分とします。試行では回答まで90分、作業合計は28分だったとします。待ちは30分短くなりましたが、作業は3分増えています。営業の確認回数が増えたのか、出荷担当の入力が増えたのかを記録から確かめ、原因を直す段階です。
比較する際は、同じ難しさと同じ完成条件の資料を使い、準備、入力、照合、修正、回答を記録します。新しい仕組みの維持作業や質問対応も別に数えてください。簡単な注文だけを試して速さを比べると、自社の実際の負担を読み違えます。取り違えや権限の誤りが残る出力を、早くできた完成品とは数えません。
経営者は、試行前に決めた条件と実際の記録を比べて、続ける、手順を直して試し直す、今回の候補を止めるという判断をします。この会社は、未確認の納期を確約しないこと、別の担当が根拠へ戻れることを必須にします。費用と担当者の時間が確保できることも必要です。全条件を満たせないなら、対象を変えた試行計画を作り、結果を再確認してから広げます。
小さい画面では、表を左右に動かして全項目を確認できます。
| 問い合わせ1件の比較・架空例 | 従来 | 試行 | この結果の読み方 |
|---|---|---|---|
| 顧客への回答までの時間 | 120分 | 90分 | 待ちは30分短い |
| 営業と出荷担当の作業合計 | 25分 | 28分 | 作業は3分多い |
| 今回の継続判断 | 現在の手順 | 原因を調べて再試行 | 待ちの短縮だけでは広げない |
担当者が待ち・作業・誤り・修正を分けて記録し、経営者が次の試行を判断する。
06 / 今日の行動
まとめ:経営者がDXの着手計画を担当者へ渡す
顧客に届ける変化、部門の担当、試す対象、継続する条件をそろえます。

中小企業のDXを始めるとき、経営者がすべての道具を調べて操作を覚える必要はありません。経営者は、顧客へ届けたい変化と会社の判断を持ち、営業・出荷・管理担当は、そのために必要な情報と操作を持ちます。担当者が通常業務の合間に抱え込む計画ではなく、準備する時間と相談する窓口を決めてください。
この会社の最初の対象は、営業と出荷担当が納期回答に必要な確認を共有する仕事です。既存Excel、既製サービス、個別開発を同じN032の条件で比べ、別の試行用記録で確認します。10月24日の準備予定が分かっても、配送条件が未確認なら10月25日の到着は約束しません。担当者が根拠を読めることが、速さより先の条件です。
試行後は、回答の正しさ、顧客の待ち、全員の手間、維持費を見て判断します。架空例の待ち30分短縮と作業3分増加を、導入成功や利益増加とは扱いません。経営者は負担が増えた理由を確かめ、試行範囲と手順を見直します。小さな結果を記録し、将来の顧客価値と会社の働き方に結び付けていくことが次の仕事です。
今日の最初の行動は、経営者が納期回答に困った受注を1件選び、営業と出荷担当に元資料と未確認事項を出してもらうことです。下の計画メモを埋め、担当者と判断日を決めてください。部門の合意や道具の選び方で迷う場合は、このメモをDREEXYへ渡して、整理すべき範囲と支援内容を相談できます。支援の可否と費用は個別に確認してください。
最近の受注1件から8欄の着手計画を埋め、準備の担当者と判断日を共有する。
経営者が担当者へ渡すDX着手計画
納期回答に困った受注を起点に、担当・試行・継続判断をそろえる。未決の予算は契約前に確定する。
空欄から始めます。記入例と自社の数字を混ぜず、不明な項目は「未確認」と書いてください。
記入済みの例を見る
- 顧客へ届けたい変化
- 営業担当が不在でも、確認済み納期と根拠を説明できる会社にする。
- 最初に変える仕事
- 営業と出荷担当が受注N032の納期回答に必要な確認を共有する。経理連携と自動送信は対象外。
- 役割と代替担当
- 経営者が判断。営業・出荷・管理が各担当。各部門は代替担当1人を指定する。
- 準備する資料
- N032の試行用注文、在庫記録、準備予定、配送条件。不要な顧客情報は除く。
- 道具を比べる条件
- 確定と未確認を分け、変更者と根拠へ戻れる。既存Excel・既製サービスで不足を確認する。
- 試行対象と完成確認
- 通常6・納期変更2・配送条件不明1・権限確認1の計10件。営業と出荷が原文と照合する。
- 時間・費用と判断日
- 経営者が準備時間と支払上限を確保。今回の道具は未選定のため費用は未確定。10件の確認記録がそろった次の打合せで判断する。
- 継続する条件と次の行動
- 納期の根拠と権限を満たし、負担と費用が許容範囲なら次を検討。架空例は作業25→28分の原因を調べ、手順を直して再試行する。
根拠と確認範囲
公式資料は原則2026年10月9日に確認。本文の数値・会社・業務例は、別記のない限り説明用の架空例です。検索順位や改善効果の実測値ではありません。
- IPA DX SQUARE 要件定義とは?
経営課題から業務要求を整理し、関係者と合意する。機能・非機能を対象にし、利用者側も主体的に関与する。経営要求への貢献で優先順位を判断する。 · 確認日:2026-10-09
- IPA DX推進指標のご案内
経営層・業務・IT部門が現状とあるべき姿のギャップを共有し、施策につなげる。2026-09-18から提出方法はWebフォーム、Excel提出受付終了。 · 確認日:2026-10-09
- 経済産業省 中堅・中小企業等向けDX推進の手引き2025
将来の経営ビジョンを描き、現状との差・解決課題を整理し、関係者を巻き込む。技術導入自体を目的にしない。 · 確認日:2026-10-09
- IPA DX SQUARE DXをわかりやすく解説
単なるプロセスのIT化だけでなく、データを用いた事業・文化等の変革がDXの趣旨であるという公式解説。 · 確認日:2026-10-09
仕事の流れから、顧客との接点まで。
一体で見直す、最初の一歩を。


