Excelで備品の貸出管理をするには?貸出簿と一覧表で今の借り手を確認する

備品管理・Excelの実務
備品の貸出履歴を残しながら「今の借り手」を一覧に出すには、貸出簿を1回の貸出につき1行、備品一覧を備品IDにつき1行にします。同じ備品IDの未返却行を数え、1行だけならその借り手を表示します。最新の行を無条件に選ぶと、二重の貸出記録や記録不足を隠すことがあります。
ここでは、マクロを使わない2シートのExcel教材を使います。架空の備品5件・貸出6行から、記録上の借り手がどう決まり、追記や実受領日の記入でどう変わるかを確認できます。表示されるのは記録上の状態です。現物の所在、破損、次に貸し出せるかは別に確かめます。
貸出簿と備品一覧を分け、同じ備品IDでつなぐ
貸出のたびに、備品一覧の借り手欄を上書きする運用では、前の貸出が見えなくなります。貸出簿に1回ずつ残し、一覧の借り手は数式で表示する形にします。借り手を変更したら元の貸出行までたどれることが目的です。
- 貸出簿:貸出ID、備品ID、借り手ID、実貸出日、返却予定日、返却受領日、記録メモを入力します。「行の状態」と「未返却の備品ID」は計算列です。
- 備品一覧:備品IDと名前を登録し、確認基準日を入れます。履歴・未返却・確認待ちの件数、記録上の借り手、状態、次の確認は計算列です。
この教材の備品IDは EQ-001 のような固定表記です。同名のノートPCも別IDにします。貸出IDも1回につき1つで、過去行と重複させません。大小文字、前後の空白、全角と半角を混在させず、* ? ~ のような検索記号をIDに使わないルールで入力します。名前や自由入力の説明文を結合キーにしません。
返却予定日は予定です。返却受領日には、管理担当が実際に受け取った日を記入します。空欄は受領の記録なし、0や文字列は確認待ちです。予定日を過ぎても自動で返却扱いにはしません。
未返却が1行なら、その行の借り手を表示する
確認基準日は2026-10-13。次の表は教材の入力値です。「未確認」は説明の表示で、教材の未入力セルには文字の「未確認」を入れていません。
| 貸出ID | 備品ID | 借り手ID | 貸出日(実績) | 返却予定日 | 返却受領日(実績) | 記録メモ | 行の状態 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| LN-001 | EQ-001 | 架空A | 2026-10-01 | 2026-10-03 | 2026-10-04 | 前の貸出。受領記録あり | 返却記録あり |
| LN-002 | EQ-001 | 架空B | 2026-10-05 | 2026-10-12 | 未確認 | 予定日を過ぎても受領欄は未記入 | 未返却 |
| LN-003 | EQ-002 | 架空C | 2026-10-03 | 2026-10-07 | 2026-10-07 | 受領記録あり。現物状態は別確認 | 返却記録あり |
| LN-004 | EQ-003 | 架空D | 2026-10-06 | 2026-10-09 | 未確認 | 未返却の記録その1 | 未返却 |
| LN-005 | EQ-003 | 架空E | 2026-10-07 | 2026-10-10 | 未確認 | 未返却の記録その2。最新行で決めない | 未返却 |
| LN-006 | EQ-005 | 架空F | 未確認 | 2026-10-20 | 未確認 | 実貸出日が未確認。借り手を確定しない | 確認待ち |
EQ-001のLN-001には2026-10-04の実受領記録があり、LN-002の実受領日は未記入です。未返却の有効な行は1つなので、一覧はLN-002の「架空B」を表示します。最後の行だから選ぶわけではありません。
| 備品ID | 備品名 | 履歴行数 | 未返却行数 | 確認待ち行数 | 記録上の借り手 | 記録の状態 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| EQ-001 | 架空ノートPC A | 2 | 1 | 0 | 架空B | 未返却1行 |
| EQ-002 | 架空プロジェクター | 1 | 0 | 0 | 該当なし | 未返却行なし |
| EQ-003 | 架空タブレット | 2 | 2 | 0 | 確認待ち | 未返却が複数 |
| EQ-004 | 架空測定器 | 0 | 0 | 0 | 未確認 | 履歴なし |
| EQ-005 | 架空ノートPC B | 1 | 0 | 1 | 確認待ち | 記録不足 |

図1の内容を文字で読む
貸出簿のEQ-001には2行あります。LN-001は架空Aへ2026-10-01に貸し出し、2026-10-04に受領した記録です。LN-002は架空Bへ2026-10-05に貸し出し、返却予定日は2026-10-12、返却受領日は未記入です。確認基準日は2026-10-13です。
備品一覧の同じEQ-001は、履歴2行・未返却1行・確認待ち0行、記録上の借り手「架空B」、状態「未返却1行」です。予定日を過ぎても実受領とは扱いません。同じ貸出行LN-002へ実受領日2026-10-13を記入すると、記録上の借り手「該当なし」、状態「未返却行なし」へ変わります。現物の所在・状態は別確認です。
返却受領日を2026-10-13と記録した後、EQ-001は未返却0行・記録上の借り手「該当なし」・「未返却行なし」になります。借り手の貸出記録がないという意味で、貸出可能という保証ではありません。
新しい貸出は追記し、返却を受け取ったら同じ行に日付を入れる
- 最初に備品一覧へ登録する。備品IDと備品名を登録し、B3の確認基準日を日付で入力します。一覧のIDは空欄・重複にしません。
- 貸すときは貸出簿へ1行追加する。新しい貸出ID、同じ備品ID、借り手ID、実貸出日、予定日、必要なメモを黄色の入力列に入れます。過去の行を上書きしません。
- 追加した行がテーブル内か確認する。貸出簿のテーブル名は
LoanLogです。最後のデータ行の次へ入力し、範囲が追加行まで広がったことと、H・I列の数式が入ったことを確認します。テーブル外に貼っただけでは集計に入りません。 - 一覧の同じ備品IDを見る。元の未返却が残ったまま新しく貸出を追加すると、「未返却が複数/確認待ち」です。先の行の受領事実を確認せず、最後の借り手を採用しません。
- 返ってきたら、その貸出IDの実受領日を記入する。予定日だけの変更や、新しい「返却」行の追加ではなく、該当する貸出行のF列に実績を入れます。一覧が変わったことを確認します。
練習では、保存したコピーにLN-007・EQ-001・架空H・実貸出日2026-10-13・予定日2026-10-20を追記します。LN-002が未返却のままなら未返却2行です。LN-002へ実受領日2026-10-13を記入すると、未返却1行・架空Hになります。この2段階で、追記と返却の両方が同じ一覧へ反映されるかを確かめます。
新しい行の計算列が空なら、まずテーブル範囲を確認します。範囲を追加行まで広げ、直前のH・I列の数式を下へコピーしてから、件数と借り手を再確認します。一覧の計算結果を手入力で直して済ませないでください。
未返却の件数を数え、1行のときだけ借り手を取り出す
両シートをExcelのテーブルにし、貸出簿を LoanLog、一覧を Equipment としています。数式の LoanLog[備品ID] は貸出簿テーブルの備品ID列です。テーブルの行の増減に対応する参照で、追加行がそのテーブル内にあることが前提です。Microsoft:テーブルの構造化参照
貸出簿の行では、貸出ID・備品ID・借り手ID・実貸出日などの不足や重複を確認します。有効な実績があり、実受領日セルが空の行だけを「未返却」とします。その行の備品IDをI列へ出します。実受領日のセルには、空文字を返す数式を入れず、日付を直接入力します。
一覧のD6は、A6と同じ備品IDかつ行の状態が未返却という2条件で数えます。Microsoft:COUNTIFS関数
=COUNTIFS(LoanLog[備品ID],A6,LoanLog[行の状態],"未返却")
記録の不足や重複を先に確認した上で、状態が「未返却1行」のときだけ、I列の同じIDを探して借り手を表示します。MATCHの最後の 0 は完全一致を指定します。ただしこの教材のID表記ルールを守ることが前提です。Microsoft:MATCH関数・INDEX関数
=IF(G6="未返却1行",INDEX(LoanLog[借り手ID],MATCH(A6,LoanLog[未返却の備品ID],0)),IF(G6="未返却行なし","該当なし",IF(G6="履歴なし","未確認","確認待ち")))
未返却行が2つ以上あると、MATCHで最初や最後の1人を出す前に「確認待ち」にします。履歴がない場合と、履歴はあるが未返却がない場合も分けます。
自作する場合の列配置と全数式を読む
教材は5行目が見出し、6行目からデータです。貸出簿A〜I列は前の表の8列と「未返却の備品ID」、一覧A〜H列は前の表の7列と「次の確認」です。まずEquipmentとLoanLogの2テーブルを作り、一覧B3に日付を入力します。貸出簿B3は ='備品一覧'!$B$3 です。列名やシート名を変えた場合は数式の参照も確認してください。
貸出簿H6:行の状態
=IF(COUNTA(A6:G6)=0,"",IF(AND(B6<>"",COUNTIF(Equipment[備品ID],B6)<>1),"備品ID未登録",IF(OR(A6="",B6="",C6="",COUNTIF(LoanLog[貸出ID],A6)<>1,NOT(ISNUMBER(D6)),D6<=0,NOT(ISNUMBER('備品一覧'!$B$3)),'備品一覧'!$B$3<=0,D6>'備品一覧'!$B$3),"確認待ち",IF(ISBLANK(F6),"未返却",IF(OR(NOT(ISNUMBER(F6)),F6<D6,F6>'備品一覧'!$B$3),"確認待ち","返却記録あり")))))
貸出簿I6:未返却の備品ID
=IF(H6="未返却",B6,"")
備品一覧C6:履歴行数
=COUNTIF(LoanLog[備品ID],A6)
備品一覧D6:未返却行数
=COUNTIFS(LoanLog[備品ID],A6,LoanLog[行の状態],"未返却")
備品一覧E6:確認待ち行数
=COUNTIFS(LoanLog[備品ID],A6,LoanLog[行の状態],"確認待ち")
備品一覧F6:記録上の借り手
=IF(G6="未返却1行",INDEX(LoanLog[借り手ID],MATCH(A6,LoanLog[未返却の備品ID],0)),IF(G6="未返却行なし","該当なし",IF(G6="履歴なし","未確認","確認待ち")))
備品一覧G6:記録の状態
=IF(OR(NOT(ISNUMBER($B$3)),$B$3<=0),"基準日確認待ち",IF(OR(A6="",COUNTIF(Equipment[備品ID],A6)<>1),"一覧ID確認待ち",IF('貸出簿'!$K$3>0,"備品IDの未紐付け",IF(C6=0,"履歴なし",IF(E6>0,"記録不足",IF(D6>1,"未返却が複数",IF(D6=0,"未返却行なし","未返却1行")))))))
備品一覧H6:次の確認
=IF(G6="未返却1行","借り手の記録と返却予定を確認",IF(G6="未返却行なし","現物・状態を別に確認","元の行を記録担当へ確認"))
貸出簿K3:未記入・未登録の備品IDの件数
=COUNTBLANK(LoanLog[備品ID])+COUNTIF(LoanLog[行の状態],"備品ID未登録")
貸出簿のH・I列、一覧のC〜H列は下の行にも同じ計算列として適用します。K3は備品IDが未記入または未登録の行の注意件数です。入力を直す担当へつなぐために使います。
未返却が複数・履歴なし・記録不足・未登録IDは確認する
- EQ-003:未返却が2行。架空Dと架空Eの記録を担当へ確認します。新しい架空Eの行が正しいとは自動判定しません。
- EQ-004:履歴なし。初期貸出の記録がないのか、本当に貸出がなかったのかを確かめます。「未確認」とし、空いているとは判定しません。
- EQ-005:実貸出日が未確認。予定日と借り手のメモがあっても、実際に貸し出した記録が不足しています。「確認待ち/記録不足」です。

図2の内容を文字で読む
EQ-003には、架空DのLN-004と架空EのLN-005という未返却の2行があります。備品一覧は「確認待ち/未返却が複数」で、最後の架空Eを自動選択しません。記録担当が2行を確認します。
EQ-004は貸出履歴がなく「未確認/履歴なし」です。空いているとは認定せず、初期記録と現物を担当へ確認します。EQ-005のLN-006は架空F・返却予定2026-10-20の記録がありますが、実貸出日が未確認です。「確認待ち/記録不足」とし、実際の貸出の記録を担当へ確認します。3例の間に原因や順序はありません。
貸出簿の備品IDが空欄・一覧に未登録なら、どの備品への記録か判断できません。一覧には「備品IDの未紐付け」を出し、貸出簿のK3と元の行を確認します。受領日0・文字列・実貸出日より前の日付・基準日より後の実績なども確認待ちです。記録を削除して注意を消すのではなく、元の記録と担当へ確かめます。
この教材は1つの管理ファイルを更新する運用の例です。複数コピーを各人が編集する状態では、どれが更新済みかは数式だけで決まりません。共有する正本と入力担当、更新時点を決めてから、借り手の確認に使います。
2シートのExcel見本を保存し、追記と返却の動きを確かめる
対象はMicrosoft 365のExcelとExcel 2021です。教材にはマクロを含めず、COUNTIFS・INDEX/MATCHとテーブル参照を使っています。Google Sheetsや別バージョンへ移す場合は、数式とテーブル機能の互換性を別に確認してください。
最初はコピーを使い、基準日・5備品の結果・LN-007追記・LN-002の実受領日の順に確認してください。セルにエラーが出る、H・I列の数式が追加行へ入らない、範囲が増えていない場合は、一覧の借り手を実務判断に使う前に直します。教材の架空名をそのまま本番の名簿として使いません。
実運用で保管する借り手情報は、管理に必要な範囲で扱います。この教材には実在の借り手情報を入れていません。共有先へファイルを渡すときは、借り手の情報と過去の貸出履歴が含まれることも確認してください。
仕事の流れから、顧客との接点まで。
一体で見直す、最初の一歩を。


