業務自動化を社内で提案するには?判断材料を1枚にまとめる方法

業務自動化を提案したいのに、「月に何時間減るか」だけでは上司や現場に説明しきれない。そんなことはありませんか。実際に試すとなると、どの作業を任せるのか、間違いを誰が確かめるのか、費用や準備作業を誰が負担するのかも決める必要があります。
この記事は、手作業を減らしたい一方で、社内の合意の取り方に迷っている業務担当者向けです。架空の注文受付を例に、提案へ書く5つの項目と、そのまま使える記入メモを紹介します。読み終えると、「小さく試す」「先に準備する」「今回は見送る」のどれが妥当か、理由と次の担当を添えて相談できます。

「時間が減る」だけでは、試してよいか決められない
入力が自動になっても、結果を照らし合わせる時間や、例外を直す手間が増えるかもしれません。利用料のほかに、初期設定、担当者への説明、保守にかかる費用が発生することもあります。間違った結果が送信されそうな時に誰が止めるのか、元の手作業に戻せるかも、試す前に決めておきたい点です。
厚生労働省の資料では、自動化の候補として、手順が決まっている仕事、定期的に繰り返す仕事、二重入力、複数システムの集計などを挙げています。ただし候補に向いていることと、すぐに導入してよいことは別です。誤りの確認方法や、停止後に手作業へ戻せるかも、社内で試す前に決めましょう(厚生労働省「業務の自動化実践のポイント」)。
社内提案の1枚に書く5つのこと
- いま何に困っているか:対象の件数、入力・確認にかかる時間、修正ややり直しの数。直近の記録がなければ、推測で埋めず「これから測る」と書きます。
- どこまでを試すか:使う資料、作業の始まりと終わり、今回は含めない仕事。自動化の境界を具体的にします。
- 誰が何を確かめるか:正解と比べる資料、照合する項目、確認担当、合格とする条件。たとえば注文番号・品番・数量・希望日を元メールと照らします。
- 費用と、残る仕事は何か:初期費用・月額費用と、準備・確認・修正・保守に使う社内時間を分けて書きます。まだ分からない金額は「未確認」とし、0円とは扱いません。
- 異常時に止め、どう戻すか:止める条件、連絡先、元の手順へ戻す方法、再開を決める人を明記します。
RPA(パソコンの決まった操作を自動でくり返す仕組み)は、手順から外れる例が多いと、その都度人の確認が必要になり、設定や運用の手間も増えることがあります。最初は一つの作業に区切り、実際の記録を使って試せるか確かめましょう。
最初に頼むのは「本導入」ではなく、次の判断に必要な確認
提案を一度に通そうとすると、確認作業の記録、試作、実データを使った試行、本導入までが一つの承認に混ざります。最初に決めてもらうことを小さく分けると、上司や関係者は「どこまで許可するのか」を判断しやすくなります。
| 今回頼むこと | 判断に必要な材料 | この時点では決めないこと |
|---|---|---|
| 現状を記録する | 記録する期間、件数、入力・確認・修正にかかった時間、記録担当 | ツール契約、本番データの使用 |
| 小さく試す | 使う資料、対象件数、確認する人、止める条件、手作業への戻し方、費用の上限 | 全社展開、送信・支払いなど確定処理 |
| 続けるか判断する | 同じ件数で比べた作業時間、間違い・修正・未処理、実際の費用 | 結果がそろう前の本導入 |
この順番は、導入を必ず進めるための手続きではありません。測った結果、確認の負担が増えた、間違いを見つけられない、元に戻せないと分かったら、次の段階へ進まない判断もできます。
相談文の記入例(すべて架空)
注文メールから受付表へ転記する作業について、まず2週間、件数と入力・確認・修正にかかった時間を記録する許可をお願いします。記録を見て試す価値があれば、別途、匿名化した資料を使う小さな試行を相談します。今回お願いしたいのは記録だけで、ツールの契約や本番データの利用は含めません。
上の文は、実際の会社の実績や承認例ではありません。提案の最初に何を決めてほしいかを明確にするための架空例です。記録自体に個人情報・顧客情報が含まれる場合は、社内規程に従い、保存場所と閲覧できる人も先に確認してください。
架空の例:注文受付の下書きまでを試す
卸売会社で、メールの注文を担当者が受付表へ転記しているとします。提案に「自動入力で月10時間削減」と書く前に、直近4週間の注文数、1件ごとの入力・照合時間、修正件数を記録から集めます。記録がなければ、数字を作らず「次の2週間で測る」とします。
試す範囲は「メールから注文番号・品番・数量・希望日を読み、受付表の下書きを作るまで」です。送信や出荷の確定は人が行います。品番が見つからない、数量が空欄、同じ注文番号がある場合は登録を止め、確認担当へ戻します。
試す前と後は同じ期間・同じ件数・同じ仕事の範囲で比べます。入力時間だけでなく、確認・修正・例外対応の時間も含めます。設定や説明にかかった時間、利用料、保守費用は別に記録します。この例は書き方を示す架空の設定であり、時間や費用が減ることを示す実績ではありません。
「試す・準備する・見送る」を選ぶ
- 小さく試す:正解と比べる元資料があり、送信前に人が止められ、手作業へ戻す方法もある。件数と期間を決め、結果を記録します。
- 先に準備する:仕事量や例外の記録がない、確認担当が決まっていない、費用や契約条件が分からない。調べる人と期限を決めます。
- 今回は見送る:誤りを見つけられないまま外部送信や支払いへ進む、元資料を残せない、手作業に戻れない。安全に確かめられる条件が整うまで対象から外します。
これは点数を足して自動で可否を決める表ではありません。社内の承認ルールや利用サービスの契約条件を優先し、判断に必要な材料をそろえるためのメモです。
そのまま使える社内提案メモ
画面上で会社の状況や変えたい仕事を選び、持ち帰るPDFを作りたい方は、社内検討資料を作るページも使えます。入力しながら整理したい場合はこちらを、コピーして自分で書きたい場合は下のメモをお使いください。
提案する仕事: いまの困りごと(期間・件数・入力/確認/修正の実測): 試す範囲(使う資料・始まり・終わり): 今回は人に残す作業: 正解を確かめる資料・項目・確認する人: 合格条件(何が一致すればよいか): 試行期間(開始日・終了日): 対象件数・除外した条件: 導入前の比較期間・件数: 試行後の比較期間・件数: 前後で記録する時間(入力・確認・修正・例外): 初期費用/月額費用/社内の準備・保守時間: 異常を見つけたら止める条件: 手作業へ戻す方法・担当・再開を決める人: 判断(小さく試す/先に準備する/今回は見送る): 足りない情報・次に確認する人・期限:
次に読む記事
- 最初にどの仕事を選ぶか迷う方は、業務自動化を何から始めるか、仕事の選び方と試す手順へ。
- 費用の出し方や見積もりの確認点を整理したい方は、業務自動化の費用を比べる方法へ。
- 試した後の時間や修正まで含めて判断したい方は、業務自動化の効果を測る計算例へ。
- 開始後の確認・変更・停止を誰が担うか決めたい方は、業務自動化の担当者と運用ルールへ。
まとめ
業務自動化を社内で提案するときは、削減時間の見込みだけでなく、試す範囲、人の確認、費用と残る仕事、異常時の止め方と戻し方を一緒に示します。測っていない数字は実績と分け、分からない費用は未確認と書きます。条件がそろえば小さく試し、足りなければ準備し、安全に確かめられなければ今回は見送る。その理由と次の担当を1枚に残せば、関係者が同じ前提で判断しやすくなります。
参考資料
- 厚生労働省「業務の自動化実践のポイント」(業務自動化の候補になる仕事の特徴、4-9ページを参照。2026年11月5日確認)
仕事の流れから、顧客との接点まで。
一体で見直す、最初の一歩を。


