AI・自動化

業務自動化しても手作業が残るのはなぜ?原因を4か所で見つける方法

請求書とノートを見ながら、担当者同士でパソコンの処理結果を確認するオフィスの様子

業務の自動化は動いているのに、担当者が前と同じExcelへ入力し直している。結果を信用できず、毎回すべてを確認している。そんな状態になっていませんか。

自動化ツールが止まっていなくても、現場に手作業が残ることはあります。原因は「担当者が使わないから」と決めつけず、仕事のどこで元のやり方に戻っているかを見つけることが先です。

この記事では、少人数の会社で業務改善を担う経営者・現場責任者向けに、手作業へ戻る場所を4つに分けて確かめます。読み終えると、次に直す一か所と、その確認を頼む人を決められます。

先に答え:自動化の前後を一つの仕事の流れとして書き、「入力」「結果の確認」「例外」「担当の受け渡し」のどこで人が同じ作業をやり直しているかを見ます。全部を自動化し直す必要はありません。まず、一番よく戻る一か所だけを直して試します。

業務自動化をこれから始める場合は、向く仕事の選び方と、安全な始め方を先に確認できます。

自動化が動いているのに、なぜ仕事は楽にならない?

「自動処理が成功した」という表示だけでは、仕事全体が楽になったとは限りません。前後にある準備、結果の見直し、間違いの修正、別の表への転記が残っていると、担当者は以前と同じ仕事を続けるからです。

たとえば請求書の金額を会計ソフトへ入れる作業を自動化したとします。それでも、担当者が毎回すべての金額を元のPDFと見比べ、別のExcelにも同じ金額を記録していれば、入力の手間は一部しか減っていません。

このとき見るのは、ツールの使用回数だけではありません。「元の資料を探す」「入力を整える」「結果を確認する」「間違いを直す」「次の人へ渡す」まで、仕事を始めてから終わるまでの流れです。経済産業省の資料も、デジタルを使う際は既存の仕事の流れそのものを見直し、その後も定期的に改善する考え方を示しています。経済産業省「DXレポート2 中間取りまとめ(概要)」

手作業へ戻る場所は、4つの順で見つける

どこで元のやり方に戻る?

まずは仕事を左から右へ追い、手でやり直す場面があれば該当する箱を見てください。

1入力の前後同じ情報を別の表にも入れている?自動化に渡す前のファイル名変更や形式直しが増えていない?
2結果を受け取ったあと自動で作られた結果を毎回すべて見直している?何が合えば完了なのか決まっている?
3いつもと違う場合空欄・重複・金額の違いが出たとき、どこへ戻し、誰に聞くか決まっている?
4人へ渡すところ確認する人が分からず、担当者が自分のメモやExcelで管理し直していない?
元資料を
用意

→

自動で
処理

→

結果を
確認

→

例外を
担当へ戻す
図:仕事の流れに沿って、手作業が戻る場所を探す。4つの箱は原因を決めつける分類ではなく、現場で確かめる質問です。

実際に一件の仕事を横で見せてもらうか、本人に画面を操作してもらいながら聞きます。「どうして手でやるのですか」と責める聞き方ではなく、「どこで不安になる?」「この作業を飛ばすと何が起きる?」と尋ねます。仕事の事情を知る人の説明なしに、理由を決めてはいけません。

請求書の確認なら、こう切り分ける

以下は仕組みを説明するための架空例です。実際の会社や導入事例の報告ではありません。

小さな会社で、届いた請求書から日付・取引先・金額を読み取り、会計ソフトへ入力する作業を自動化しました。数週間後も、担当者は請求書の金額をExcelへ記録し、会計ソフトの結果と一行ずつ照らし合わせています。

現場で見えたこと 先に聞くこと 最初に試す改善 確認する人
Excelと会計ソフトの両方へ同じ数字を入力する Excelは誰が何を決めるために使っている?会計ソフトの結果が表に戻る仕組みはある? Excelの全項目を残す必要があるか、目的ごとに確認する。削除は担当者と合意してから行う。 日々の入力担当と、Excelを使う上司
自動入力のあと、すべてを元PDFと照合する 以前にどんな間違いが起きた?どの項目なら見本と比べて確認できる? 日付・取引先・金額など、間違うと困る項目と確認方法を決め、小さな件数で試す。 入力担当と会計処理の責任者
金額や取引先が合わないと、処理が止まる どんな違いなら自動処理を止める?誰に何を見せて判断してもらう? 「確認待ち」に送る条件と、担当者へ渡す情報を決める。違いを無理に自動で埋めない。 例外を判断できる人
急ぎの仕事だけ昔の方法に戻る 急ぎのとき、どの手順なら間に合う?二つの方法で同じ内容を二重登録していない? 通常の流れと急ぎの流れを分け、どちらで処理したか記録する。 現場責任者と実務担当

大切なのは、Excelをすぐに廃止することでも、もう一度ツールを買うことでもありません。表が必要な理由を確かめずに消すと、担当者が別の場所に同じ管理表を作ることがあります。まず「誰が、何を判断するために、この表を見るのか」を確認します。

原因が分かったら、一度に一か所だけ直す

  1. 仕事を一つだけ選ぶ。毎日ある仕事でも、月末に一度ある仕事でもかまいません。「請求書を会計へ入れる」のように、始まりと終わりが分かる名前にします。
  2. 実際の一件を見せてもらう。記憶だけで手順を書くと、例外や手直しが抜けます。個人情報や取引先名は記録せず、作業の順番と使う資料だけを書きます。
  3. 戻った場所に印をつける。元資料を直した、別表へ転記した、全部確認した、担当者へ聞き直した。その場面を4つの確認点に当てはめます。
  4. 本人と改善を一つ決める。入力項目を減らす、確認の条件を決める、例外の送り先を作る、担当を明記する。大きな作り替えは後にして、一つだけ試します。
  5. 同じ条件で前後を比べる。同じ種類の仕事を、同じ件数で見ます。自動処理の時間だけでなく、準備・確認・修正・例外対応にかかった時間も記録します。

たとえば、試行前と後で請求書各10件を処理し、準備にかかった分、確認にかかった分、修正件数、確認待ちの件数を並べます。この「10件」は説明用の試し方であり、一般的な正解や効果の保証ではありません。自社で比べる件数は、仕事量に合わせて決めてください。

中小機構の支援情報でも、ITを入れること自体を目的にせず、業務をよくする手段として考えることが案内されています。仕組みを追加する前に、手作業が戻った理由と、直す価値のある箇所を確かめます。J-Net21「無駄な業務をなくして効率化を図るには、どのようにすればよいでしょうか?」

現場を責めずに進めるための確認メモ

次の打ち合わせで、そのまま埋められるメモ

  • 対象の仕事:________
  • 自動化の前にしていた作業:________
  • 今も人がやり直していること:________
  • 手作業へ戻る場所:入力前/結果確認/例外/担当の受け渡し
  • そうする理由(担当者に聞いた言葉):________
  • まず一つだけ変えること:________
  • 試す期間・件数:________
  • 前後で記録するもの:準備時間/確認時間/修正件数/例外件数
  • 結果を見て次を決める人:________

理由が「結果が間違うのが怖い」なら、使う人へ注意するだけでは解決しません。どの結果をどう確かめればよいかを、一緒に決める必要があります。理由が「急ぎのときに待てない」なら、例外時の連絡先や代わりの手順が要ります。現場の行動は、改善すべき場所を教える手がかりです。

次に何をすればいい?

まず、手作業に戻っている仕事を一つ選び、その仕事を実際に担当する人に15分だけ流れを見せてもらいます。「いつ・何を・なぜ手でやり直すか」を一行で記録できれば、改善の出発点になります。

頻繁に止まって二重登録が心配な場合は、原因の診断を終えてから、業務自動化が途中で止まったときの再開手順で安全な復旧方法を確認してください。日々の確認や変更を誰が担うか迷う場合は、業務自動化の担当者と運用分担を参照できます。

本記事の請求書の例は説明用に作った架空例です。会社の実績や効果を示すものではありません。前後比較の件数・期間は各社で決めてください。公的資料の記述は公開資料の対象・時点に基づき、すべての業種に同じ結果を約束するものではありません。

参考にした公的資料

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