業務改善・組織運営

仕事の無駄はどこから調べる?現場の声と事実を確かめる進め方

見積依頼から現場の声・確認した事実・未確認を分け、次に確かめる項目を選ぶ流れ
見積依頼から現場の声・確認した事実・未確認を分け、次に確かめる項目を選ぶ流れ
見積依頼を入口に、声と確認した事実を分け、次の確認先を決める流れ。

会社全体を一度に調べるのではなく、まず一つの仕事を選び、依頼から完了までをたどります。現場の声、記録や観察で確かめた事実、原因の仮説を分けると、次に確認する人や資料を決めやすくなります。

先に確認すること対象の開始と完了をそろえ、依頼時の記録と現場の説明を比べます。確かめられない原因は仮説として残し、次に見る資料や聞く相手を決めます。

「確認に時間がかかる」という声だけで、確認作業を原因と決めることはできません。何がいつ渡され、どこが分からないのかを見ます。この記事では、中小企業の経営者や組織運営担当が、改革案を決める前に調査範囲を絞る手順を、見積依頼の例で説明します。

たとえば、月曜に見積依頼が届いた場面を出発点に、聞いた話と確認できた事実を分け、次の確認先を選びます。

まず、調べる仕事を一つ選ぶ

「会社の仕事をすべて調べる」より、困りごとが見える一つの仕事から始めます。選ぶときは、誰が依頼し、何を受け取り、何ができれば完了なのかを決めましょう。例えば「見積依頼を受け、内容を確認して回答するまで」です。

図では、見積依頼を受けた時点から、依頼者へ見積を回答する時点までを調べる範囲として決めます。これは対象範囲の設定であり、この一件の見積回答がいつ完了したかは、後で記録から確かめます。回答後の受注処理まで含める場合は必要な資料が変わるため、最初に範囲をそろえます。

見積依頼を受けて回答するまでの調査範囲と成果物
調べる仕事の開始・完了・成果物をそろえる例。

件数や影響がまだ分からなければ、まず現場から「どの仕事で困るか」を聞き、資料をたどれる一件を選びます。一件は調査の入口であり、会社全体の代表とは限りません。

依頼から回答までの流れをたどる

対象が決まったら、依頼を受けた日時、必要な情報の確認、回答を返した日時を、メールや業務記録と担当者への聞き取りで並べます。資料に残っていない部分も「空白」として残しましょう。

たとえば、月曜に見積依頼を受け、水曜に社内へ仕様の確認を頼み、木曜にその返答があったケースで考えます。依頼者への最終的な見積回答の日時は未確認です。図では月曜から水曜の区間を見てください。

月曜の見積依頼、水曜の仕様確認依頼、木曜の仕様確認への返答。最終的な見積回答の日時と月曜から水曜の作業・待ちは未確認
たとえば、月曜の見積依頼に水曜の仕様確認と木曜の返答が続いたケースです。最終的な見積回答の日時は未確認として残します。

この情報だけでは、月曜から水曜にどんな作業をしたか、他の仕事と並行していたかは分かりません。水曜に確認依頼を出した事実と、その理由は別に記録します。

現場の声・確認した事実・原因の仮説を分ける

話を聞くときは、意見を消さずに残しつつ、何で確かめたかを書き添えます。本人の声は調べる手がかりです。一方、記録にある日時は、その記録が示す範囲の事実です。

図では「確認に時間がかかる」という声と、水曜に依頼を送った記録を並べ、その間に何があったかを未確認として残しています。

担当者の声、水曜の記録、未確認の原因仮説、次の質問を分けた例
声と記録はどちらも残し、原因は確認後に見直す。
  • 現場の声
    担当者は「仕様の確認に時間がかかる」と話しました。どの情報がいつ必要だったかを聞きます。
  • 確認した事実
    記録には水曜に確認依頼を送ったとあります。月曜から水曜の作業を別の記録や本人の説明で確かめます。
  • 原因の仮説
    依頼時に必要情報が不足していた可能性があります。依頼時に届いた情報と、確認時に求めた情報を比べます。
  • まだ分からないこと
    月曜から水曜の作業と待ちの内訳は未確認です。着手時点と並行していた仕事を聞きます。

それぞれの声や記録と一緒に、次に確かめることを記しました。仮説は答えではありません。資料や聞き取りで確かめられなければ、未確認のまま扱います。

例

例えば、依頼時のメールには製品名と数量があり、見積に必要な使用環境が書かれていなかったと仮定します。水曜の確認依頼でも使用環境を尋ねていれば、最初に必要な情報が揃っていなかった可能性を、担当者に確かめられます。一方、依頼時のメールに使用環境も書かれていたなら、情報不足と決めず、その情報が担当者に届いていたか、なぜ確認が必要だったかを聞きます。どちらも資料を見る前の例であり、この一件の確認結果ではありません。

食い違う話は、同じ一件と記録で確かめる

担当者と依頼先の説明が違っても、すぐにどちらかを間違いと決めないでください。別の日の案件を思い出していたり、依頼を受けた時点と作業を始めた時点を違う意味で使っていたりすることがあります。

図のように、同じ見積依頼を指しているかを先にそろえ、日時と資料を確認します。

同じ依頼について異なる記憶を日時と記録で照合し、未確認を残す
異なる説明を比べる前に、対象の一件と時点をそろえる。
例

例えば「依頼を受けたとき、何が分かっていましたか」「確認を頼む前に、どんな作業がありましたか」「記録で確かめられる日時はありますか」と聞きます。思い出せない箇所を無理に埋めず、確認できる人や資料を次の欄に書きます。

複数の部門で開始条件や判断が食い違っている場合は、部門ごとの条件を持ち寄って確認する方法も参考になります。ここでは、会議で結論を出す前に、その一件で確認できたことを整理します。

影響と頻度を見て、次に調べる箇所を選ぶ

複数の気になる点が出たら、改善策を急いで決める前に、仕事への影響、発生頻度、確認できる情報を並べます。影響とは、例えば回答が遅れた場合に次の仕事が止まるかどうかです。頻度が分からない場合は「不明」と書き、推測の数で順位を付けません。

図では、繰り返し起きていると確認できる点と、まだ一件しか分からない点を分けます。

影響、頻度、確認できる情報を比べ、頻度不明の項目は保留する例
分からない項目は保留し、次に確かめる対象を選ぶ。

この例なら、まず「依頼時に必要な情報が揃っていたか」を確認できます。頻度が不明なら、追加の案件を確認するまで全体の問題と決めません。個人の評価や部署の変更を、一件の記録だけで決めることも避けます。

例

例えば、仕様の確認が発生したのはこの一件しか分からない一方、別の転記作業では複数の依頼で同じ記入を繰り返すことが記録から確認できたとします。両方の影響がまだ分からなければ、転記を直すと決めるのではなく、転記に使う資料と、その作業が後続の回答にどう影響するかを次に確認できます。仕様確認も候補から消さず、ほかの依頼で同じ情報不足があったかを確認します。

逆に、転記の記録がなく頻度も不明なら、仕様確認より先と決める根拠はありません。どちらかの担当者に、対象の一件と確認できる資料を聞くところから始めます。どちらの例も、確認結果が変われば調べる順番を見直します。

調べた結果、作業や判断の担当があいまいだと分かった場合は、成果物ごとに担当と確認の役割を見直す方法へ進めます。調査段階では、役割の変更を原因確認前に決めないことが大切です。

次の一件で確かめ、結果に合わせて見直す

確認の結果、必要な情報が分かれていると分かった場合は、依頼時に確認する項目を簡単にまとめ、次の一件で試します。担当者に項目の過不足を聞き、追加の確認が発生したか、依頼から回答までに何が起きたかを記録します。

この図では、依頼時に必要な情報を確認してから次の一件で試し、項目の過不足・追加確認・仕事の流れを記録します。試した結果を見てから、確認項目を残すか見直します。

必要な情報を確認し次の一件で試し、追加確認と仕事の流れを記録して見直す
たとえば結果をまだ確認できない段階では空欄のままにし、試行後に記録して見直します。

必要情報が揃っていても確認が続くなら、別の理由があるかもしれません。その場合は、確認が必要な条件や例外を調べ直します。試す前に改善率や削減時間を決めつけず、本人と確認した結果を基に次の判断をします。

まとめ:一件をたどり、分からないことを残す

仕事の無駄を調べるときは、まず対象の開始と完了を決め、現場の声と記録を並べます。確かめた事実と原因の仮説を分け、影響や頻度が不明なら保留します。そのうえで、次に聞く人と見る資料を決めましょう。

対象の仕事を決め、声と事実を確かめ、未確認を残し、次の一手を選ぶ流れ
対象・確認・未確認・次の一手を同じ仕事でつなぐ。
今日の一歩気になる仕事を一つ挙げ、「依頼を受けてから何ができれば完了か」を担当者と確認します。記録を見るときは目的に必要な範囲に絞り、顧客や従業員の個人情報を不要に共有しないようにします。

参考資料:中小企業基盤整備機構 無駄な業務をなくして効率化を図るには、IPA 要件定義の勘どころ。前者は業務の無駄の把握、後者は、システム化の要件定義で現行業務を実態と照合する文脈を確認する際の参考です。月日や案件の進行は、確認手順を示すための例として置いています。

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