顧客の苦情をAIで分析するには?よくある不満と件数の変化を確かめる方法

数か月分のメール、電話要約、サポートメモを見直す支援責任者向けです。AIで似た苦情をまとめる前に、何を1件として数えるか、比較期間、対象チャネル、分類版をそろえます。条件が違う増加は、サービス悪化や原因の証明にしません。
架空の原記録8件を開いて、分類と数え方を確かめる
同じ文字は同じ出来事に結び付けた案件です。候補分類は人が確認する前の仮案で、実顧客の記録ではありません。
- 4月・メール/案件A:「予約時刻を過ぎても担当者が来ず、連絡もありませんでした」→ 訪問遅延、連絡不足。
- 4月・電話要約/案件A:「昨日の訪問遅れについて折り返しがない」→ 連絡不足。
- 4月・サポートメモ/案件B:「説明が難しく、作業後の料金も分かりにくかった」→ 説明不足、料金説明。
- 4月・メール/案件C:「担当者の対応について相談したい」→ 未分類。
- 5月・メール/案件D:「訪問が30分遅れ、到着予定の連絡もありませんでした」→ 訪問遅延、連絡不足。
- 5月・電話要約/案件E:「訪問予定の変更を当日に知らされた」→ 連絡不足。
- 5月・電話要約/案件E:「予定変更について問い合わせた後、折り返しがないので再度連絡しました」→ 連絡不足。
- 5月・チャット/案件F:「訪問予約についてチャットで問い合わせましたが、まだ返答がありません」→ 連絡不足。
各月の連絡数、異なる案件の数、連絡不足の仮候補の数を数え、下の比較表と照合してください。5月のチャットは4月には対象外だったため、期間差をそのまま悪化とみなしません。
苦情の件数を比べる前に、担当者は何を同じにする?
「連絡数」「苦情案件数」「論点言及数」は別物です。同じ訪問遅延についてメールと電話が届けば、連絡は2件でも案件は1件です。1通に「訪問の遅れ」と「連絡なし」が含まれれば、案件は1件でも論点は2つです。
左の2つの連絡記録と、右の1記録内にある2つの色分けを見比べてください。

見る場所:どの連絡が同じ案件か、1件に複数論点があるか。読後の判断:会議で示す件数の単位を明記する。
比較する前に、対象のサービスと除外条件もそろえます。発生日と入力日は別に記録し、月末の申出を翌月に入力した場合に、どちらの日付を集計に使ったかを残してください。同じ期間でも締め方が違えば、そのまま比較できません。
| 比較条件 | 記録する内容 | 確認 |
|---|---|---|
| 集計単位 | 案件数/連絡数/論点数 | 混ぜない |
| 期間 | 4月、5月 | 締め基準を同じにする |
| 対象チャネル | メール・電話・サポートメモ | 新規チャネルを別表示 |
| 分類版 | 仮分類 v1 | 途中変更を明記 |
| 未分類 | 判断保留 | 0件にしない |
自社の条件を整理するときは、集計単位、期間、対象チャネル、対象サービス、除外条件、分類版、未分類の扱いをメモに書き出します。例えば営業案内は、定義に従い対象外(false)として集計に入れません。4月の全訪問件数は未取得(null)で、対象外や0件とは別です。
AIは苦情のどこまでを候補分類にしてよい?
AIへ任せるのは、原文から論点候補を抜き出し、似た表現の仮グループを提案するところまでです。候補分類だけを保存せず、元の記録と原文箇所へ戻れるようにします。
画像では、原文の異なる2か所と、判断を残した灰色の付箋を見てください。

「担当者の対応について相談したい」だけでは論点を確定できません。未分類として残し、人が原記録や追加情報を確認します。個人情報をAIへ渡せる範囲は、会社の規則と利用環境で別途確認します。
各記録の苦情に該当しそうな原文箇所を抜き出し、記録と候補分類を対応させてください。1件に複数の論点があれば複数候補を許可し、判断できないものは未分類にしてください。原因やサービス悪化は推測しないでください。
同じ案件の再連絡と、1通の複数論点をどう数える?
予定変更の電話と、その折り返しを求める再連絡は、連絡2件・案件1件として保持します。一方、1件のメモに「説明が難しい」「料金が分かりにくい」があれば、案件1件・論点2つです。
左の2つの連絡を同じ案件へ結び、右の1通にある2つの論点を別に見る場面を比べてください。

連絡2/案件1
案件1/論点2
対象連絡数、重複をまとめた案件数、論点言及数、未分類を別々に保持します。再連絡の原記録は削除せず、同じ案件へ結びます。再連絡そのものが「折り返しがない」という別の不便を示す場合もあるためです。
件数が増えたとき、担当者は悪化と判断してよい?

見る場所:左の記録から案件・論点へ分ける線と、右の2期間で追加された受付チャネル。読後の判断:条件が変わった増加は保留し、原記録へ戻る。
次の画像では、両期間に共通するメール・電話と、右側だけに追加されたチャットを見比べます。サポートメモも両期間の共通対象ですが、この画像では省略しています。

| 比較項目 | 4月 | 5月 |
|---|---|---|
| 対象連絡 | 4 | 4 |
| 案件 | 3 | 3 |
| 連絡不足の論点言及 | 2 | 4 |
| 受付範囲 | メール・電話・メモ | メール・電話・メモ・新規チャット |
対象連絡の4件は、この架空例に入れた顧客申出の数で、全訪問件数や全顧客数ではありません。全訪問件数が未取得なら訪問あたりの苦情率は計算せず、未確認とします。割合を示すときは分子と分母の単位・対象範囲・期間をそろえます。
ここから言えるのは、同じ仮分類で確認した架空記録では5月に連絡不足の言及が複数あった、ということまでです。5月には新しいチャット受付と同じ案件の再連絡があるため、「2倍に悪化した」とは判断しません。
まず共通する受付経路に絞り、再連絡を案件単位にまとめ直します。対象の母数が分かれば、その範囲と一緒に割合を見ます。分類定義を途中で変えた場合は前の期間も同じ定義で再分類できるか確認し、できなければ比較を保留します。記録を取得できない場合は、その理由を残し、0件として扱いません。
これは別の仮定です。上の架空の原記録8件で分類を変更したという意味ではありません。
比較へ進む場合も、期間・受付範囲などの条件をそろえて確認します。
担当者は原記録と業務担当へ何を確かめる?
- 同じ案件の再連絡を重複していないか
- 1件の複数論点を案件増加と誤読していないか
- 受付チャネル、営業時間、対象商品が変わっていないか
- 分類定義やAIへの依頼文の版が変わっていないか
- 未分類や欠測が一方に偏っていないか
- 業務担当者が把握する運用変更と一致するか
連絡メモと運用変更の記録を突き合わせ、右側の引継ぎ用紙へ何を残すかを考えます。

似た言葉が集まっただけでは共通原因は分かりません。必要に応じて運用記録や個別案件を確認し、引継ぎには対象、集計単位、分類版、見えた差、保留理由、次の確認、担当と再確認日を残します。例えば「チャット追加と再連絡があるため保留し、共通チャネルで再集計して担当者へ確認する」と記載します。
対象:訪問予約・訪問後対応/集計単位:案件数と論点言及数を別表示/分類版:v1/見えた差:5月に連絡不足の候補が複数/保留理由:新規チャットと再連絡/次の確認:共通チャネルで再集計し受付変更を担当者へ確認/担当:支援責任者/再確認:翌月データ確定後。
自社のメモには、この項目を写し、担当者と再確認日を実際の条件に置き換えてください。
まとめ:苦情の増減は、同じ条件と原文をそろえて渡す
先に数える単位、期間、受付範囲、分類版を固定し、AIの候補を原文へ結びます。人が再連絡、複数論点、未分類、欠測を確認し、件数と対象母数を同じ条件で比べます。受付経路や分類ルールが違えば判断を保留します。

5月には新規チャットと同じ案件への再連絡があります。
再連絡を案件へ結び、未分類を残します。全訪問数は未取得のため、訪問あたりの率は出しません。
保留理由と次の確認を記し、翌月のデータ確定後に再確認します。
件数と判断は説明用の架空例です。実データや改善実績ではありません。
次の行動

実データを投入する前に、利用できる記録と匿名化ルールを確認します。まず少数の許可済み記録で、連絡数・案件数・論点数・未分類を別々に出し、原文へ戻れるかを担当者同士で確かめてください。
一次資料:NSW Ombudsman “Effective complaint management guidelines”。苦情記録と傾向解釈の範囲で参照。日本法、AI性能基準、普遍的な数値基準、架空企業の傾向を証明する資料ではありません。
仕事の流れから、顧客との接点まで。
一体で見直す、最初の一歩を。


