業務改善・組織運営

システム導入のWBSの作り方|作業・担当・完了条件を一つずつ決める

SIのWBSはどう作る?成果物から仕事を分け完了条件を付けるの実務ガイド。SIのWBS作成:記入メモ

『システムを導入する』と予定表に書いても、その一行だけでは誰に何を頼めばよいか分かりません。画面を作る人が決まっていても、検索の条件を考える人や、使い方を説明する人が抜けていることがあります。

この記事では、社内の導入担当者に向けて、大きな仕事を『何を残すか・誰が担当するか・何を確かめたら終わりか』まで分ける方法を説明します。仕事を段階的に分けて整理したものがWBSです。読み終えたら、自社の曖昧な一行を、担当者に相談できる作業へ書き直してみましょう。

この記事で整理できること

  • 今回の導入に含める仕事と、含めない仕事を分けられる。
  • 一つの仕事に、残すもの・担当・確認する人・完了条件を書ける。
  • 使い方の説明や動作確認など、画面づくり以外の仕事の抜けを点検できる。

登場する貸衣装会社『彩衣装』と作業は、説明のための架空例です。一店舗で、社内の担当者が品番から衣装を探す仕組みの導入準備を考えます。実際に完成・確認・運用された結果ではありません。

架空の貸衣装店で一店舗の品番検索を準備する例。検索の条件、試して使う画面、確認記録、手順と説明の四つを同じ親の内訳として示す。
在庫検索の準備を四つに分けた架空例です。四つは作業の順番ではなく、今回残すものの分類です。貸出承認・売上管理は含めていません。

最初に、使えるようにしたい仕事と今回は含めない範囲を決める

細かい作業を並べる前に、『誰が何をできるようにするか』を一文にします。

彩衣装の例では、『一店舗の担当者が、品番から衣装を探す準備を整える』が今回の目的です。この一文がないまま作業を並べると、在庫検索を作る話に、貸出の承認や売上管理まで混ざってしまいます。

『どこまでやるか』と『今回はどこまでやらないか』を、業務の責任者と確認します。まだ判断できない仕事は、勝手に含めたり除いたりせず、『範囲を確認する仕事』として残しましょう。

目的が決まったら、その下に必要なものを分けます。WBSは、このように大きな仕事の中身を段階的に整理するためのものです。先に日付を埋める表として作り始める必要はありません。

最初にそろえる導入の範囲(架空例)
確認すること今回の例まだ決まっていなければ
使う人・場所一店舗の社内担当者対象となる店舗と担当者を業務責任者へ確認する
できるようにする仕事品番から衣装を探すための準備探した後に何を判断するのかを確認する
今回は含めない仕事貸出承認、売上管理追加の依頼を受けた時に、範囲を決める人へ相談する

画面だけでなく、条件・確認記録・使い方も『残すもの』に入れる

作業の結果として残すものから分けると、設定や開発以外の仕事にも気づけます。

彩衣装では、導入準備を『検索の条件』『試して使う画面』『確かめた内容の記録』『使うための手順と説明』の四つに分けます。これは教材用の分け方です。自社の契約や使う製品に合わせて、必要なものを足したり分け直したりしてください。

『成果物』という言葉は、このように仕事の結果として残す画面や資料を指します。売上などの成果だけを意味する言葉ではありません。例えば検索条件の一覧も、誰かが作り、次の担当者へ渡す成果物です。

完成した画面だけを見て『導入準備は終わり』とすると、使う担当者が何を確かめ、どう操作するかが残ってしまいます。使い始めるために必要な資料や確認も、ここで同じ一覧に置きます。

在庫検索の準備で残すもの(架空例)
残すもの何が書かれる・用意されるか抜けると困ること
検索の条件品番の入力例、該当する品がない時の扱い、見られる情報の範囲作る人と使う人で、必要な動きが食い違う
試して使う画面確認用の品番例を使って試せる画面条件どおりに使えるか試せない
確認記録試した条件、期待した結果、実際の結果、残った問題何を確かめ、何が未確認か分からない
手順と説明操作手順、説明する内容、分からない時の確認先画面ができても、使う担当者が迷う

担当者が作るものと完了を説明できる大きさまで分ける

『何を残し、何を確認すれば終わるか』が違う仕事は、分けて書きます。

例えば『検索の条件を決める』という仕事には、品番が分かる時、品番が分からない時、誰がどの情報を見られるか、という別の確認が含まれます。まとめた一行のままで担当者が見積もったり説明したりできないなら、三つに分けます。

一方で、行を増やすこと自体が目的ではありません。『ファイルを開く』『一文字入力する』まで細かくしても、依頼する仕事や完了の判断が分かりやすくなるとは限りません。担当者が、必要なものと残すものを説明できるかを目安にしましょう。

WBSに番号を付けると、大きな仕事とその中身の関係をたどりやすくなります。ただし、番号は日付の順を意味しません。検索条件が決まらないと画面づくりに進めない、といった前後の関係や人の空きは、日程を作る時に別に確かめます。

大きな一行を、相談できる仕事に分ける(架空例)
大きな仕事分けた仕事その仕事で残すもの
検索の条件を決める品番が分かる時の検索条件を整理する入力する品番の例と、表示したい情報の一覧
検索の条件を決める品番が不明・該当する品がない時の扱いを整理する候補を確定せず、確認する手順と表示の条件
検索の条件を決める担当者ごとに見られる情報を確認する誰がどの情報を見てよいかを確認する一覧
検索の条件を決める仕事を、品番が分かる時、品番が不明な時、誰が見るかの三つへ分ける。枝は内訳であり、日付の順を示さない。
「検索の条件を決める」の中身を三つに分けた架空例です。枝分かれは仕事の内訳です。番号や図の並びだけで、作業する日程は決まりません。

担当者・確認する人・終わりの条件を一行にそろえる

『作る人』と『何を見て完了とするか』を、作業に取りかかる前に相談します。

彩衣装の『品番が分かる時の検索条件を整理する』仕事では、店舗主任が入力例と表示したい情報を一覧にします。業務責任者は、その一覧が店舗の仕事に合うかを確認します。このように、作る人と確認する人の役割を説明できるようにします。

完了条件とは、『何が確認できたら、その仕事を終えたと言えるか』という目印です。単に『責任者が確認』とせず、『入力例と表示する情報が書かれ、未決定の点が区別され、その扱いを責任者が確認する』まで書くと、話し合う内容がそろいます。

ここで決めるのは完了の条件です。条件を書いたことは、確認が終わった証拠にはなりません。実際に確認した日、確認した資料、残った問題は、仕事を進めた後の記録に残します。

このような仕事ごとの説明をまとめたものを『WBS辞書』と呼びます。最初から難しい書式を用意する必要はありません。自社で使う表の一行に、目的、残すもの、担当、完了条件、前提を書ければ、担当者への相談に使えます。

一つの仕事を依頼するためのメモ(架空の計画例・作業未実施)
項目書く内容の例
目的と作業品番が分かる時に、何を入力してどの情報を見るかを整理する
残すもの入力する品番の例、表示したい情報、未決定の点の一覧
作る担当店舗主任。本人が引き受けられるかは確認が必要
確認する人業務責任者。確認できる日は未定
完了条件入力例と表示情報、未決定の点とその扱いを業務責任者が確認する
着手前に必要なもの現在の品番一覧と、担当者がどの情報を見るかの説明
今回は含めないこと画面の設定、貸出の承認、売上管理
未確認と次の行動品番一覧の版と確認日を確かめ、店舗主任へ担当と作業時間を相談する

説明や確認の抜けと、同じものを二重に作る仕事を確かめる

残したいものから必要な作業をたどり、次に各作業が何につながるかを確かめます。

最初は『使うための手順と説明を用意する』という目的から見ます。そのための手順作成、内容の確認、使う人への説明が一覧にあるかをたどります。画面づくりしかなければ、利用準備の仕事が抜けています。

次は、個々の仕事から逆に見ます。例えば導入担当と店舗主任がそれぞれ『確認記録を作る』となっていたら、同じ記録を二重に作ろうとしているのか、別の条件を確かめるのかを相談します。名前が似ているだけで削らず、目的と残すものを比較しましょう。

NASAのソフトウェア向けWBS資料でも、レビューや教育、関係者との約束を整理する仕事などが抜けやすい項目として挙げられています。本稿では仕事の漏れを点検する考え方を参考にしています。NASAの事業向け要件を、読者の会社にそのまま義務づけるものではありません。

追加の依頼が来たら、元の一覧を残し、どの仕事が増えるかを確認します。例えば『他の店舗の在庫も見たい』となれば、画面だけでなく、見られる情報の範囲、確認用の例、手順や説明も見直す必要があります。実際に含めるかは、範囲を決める人へ相談します。

一覧ができた後の点検
見るところ確かめること見つかった時の次の行動
仕事の抜け必要な資料・画面・確認・説明に、作る仕事と担当があるか足りない仕事を追加し、担当できる人へ相談する
仕事の重なり似た名前の仕事で、目的と残すものが重複していないかまとめるか、役割と成果物の違いを明記する
範囲の追加新しい依頼が、今回含めると決めた範囲に入るか責任者へ判断を求め、元の範囲と変更理由を残す
まだ分からない仕事調べないと内容や大きさが分からない項目がないか調べる仕事と確認先を置き、分からないまま日数を確定しない

まとめ:曖昧な作業を一つ選び、担当者と完成の目印を決めよう

最初の一歩は、一覧を細かく埋めることより、一つの仕事を相手に伝わる形にすることです。

WBSは、大きな仕事を『誰が何を残し、何を確かめれば終わるか』まで整理するために使えます。目的と対象外を決め、残すものから仕事を分け、担当者と完了条件をそろえます。最後に、確認や説明の抜け、仕事の重複を点検しましょう。

今の一覧にある『導入準備』『要件対応』などの一行を選んでください。その行に、残すもの、担当する人、完了の目印を書き足します。まだ決まらない項目は、確認する相手と次の行動として残せば、相談を始められます。

『何から頼めばいいのだろう』と一人で抱えていた仕事も、一行に書ければ相手と確かめられます。まずはその一行を、実際に担当する人へ見せてみましょう。仕事の範囲がそろったら、作業の順番と人の空きを確認し、日程の計画へ進みます。

曖昧な作業を依頼できる形へ整理する手順。範囲を決め、仕事を分け、担当と完了の目印を書き、確認や説明の抜けを点検する。
一行の作業を相談できる形にする、読者の整理手順です。条件を書いただけで作業完了とはせず、分からないことは確認先と次の行動を残します。

自分の仕事を8項目で整理し、担当者との相談に持っていく

自社の大きな仕事を一つ選び、残すものと完了条件を整理します。まだ決まっていないことは、確認先と次の行動を書いてください。

これは仕事を依頼する前の計画メモです。作業完了・担当者の引受け・確認済みを意味しません。

入力した内容は外部へ送信しません。このページを再読み込みすると消えるため、必要なメモは保存してください。個人情報や機密は記入しないでください。

空欄の用紙と、書き方を確認できる架空例

CSVは、項目名が8列・記入内容が1行の形式です。架空例は完成した実績ではありません。自社で確認した内容へ書き換えて使います。

WBSを作るときによくある疑問

WBSとスケジュールはどう違いますか?

WBSは必要な仕事の中身を整理するものです。スケジュールでは、その仕事をどの順番で、いつ行うかを考えます。WBSの番号だけで日程を決めず、必要な前提と人・環境の空きを確かめます。

どこまで細かく分ければよいですか?

担当者が、何を作り、何を確かめたら終わるかを説明できる大きさを目安にします。まだ仕事の内容や見積もりを説明できない時は、作るものや目的の違いから分け直します。共通の日数や行数で一律に決めるものではありません。

担当者や必要な機能がまだ決まっていない時は?

未確認のまま残し、誰に何を確かめるかを書きます。製品で実現できるか分からない時は、その確認を一つの仕事にします。担当や機能を仮のまま確定事項として扱わないようにしましょう。

WBS辞書を別の文書で作る必要がありますか?

まずは自社で使う作業一覧に、目的・残すもの・担当・完了条件・前提を書いて、担当者が理解できるか確かめてください。契約や社内規程で書式が決まっている場合は、その書式に合わせます。

出典と、このガイドの前提

原稿・一次情報の確認日:2026年10月12日。図の人物・店舗・資料は生成した架空の説明例です。作業の完了や導入の効果を示す実績ではありません。

  • NASA Software Engineering Handbook 7.05 Work Breakdown Structures That Include Software

    第2〜4節。必要な仕事の階層化、目的・作るもの・依存を説明する辞書、レビューや教育などの漏れを点検する考え方。

    NASAのソフトウェア事業向け資料です。本稿の架空会社の分け方や期間・成果を保証するものではなく、日本の中小企業へ義務を定める資料でもありません。

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